「2011年2月23日、初日ー『箱』出演メンバーに向けて」
箱にまつわる、さまざまなこと、かな?

                           2011.2月『箱−Boxes-
』当日パンフレットより

 舞台には、20個の木箱が置かれている。稽古場に集まった俳優は、その周りで何をしていいのかわからずにただただ茫然としている。公演は1週間後に迫っているのにシーンはひとつもできていないのである。時々そんな夢を見る。
 しかしそれは夢ではなく本当のことだった。13年前、アジアミーツアジアに参加するための作品を作るために集まった私たちは、本番1週間前になっても、ただただ茫然としていたのである。
 何故そんなことになったのかといえば、それは私が台本を書けなかったからである。あたりまえのことだが台本がなければ、俳優は台詞をしゃべることができない。結果的に稽古場には重い空気が流れ続けることになる。私はといえば、そんな空気の中で、臨死体験の話をしゃべり続けている。
 正直なことを言えば、私は、韓国、香港、マレーシア、インドの劇団が参加して行われたフェスティバルに向けて、気の利いたお話のひとつも持ち合わせていなかったのである。もっといえば、それまで海外旅行もしたことがなかった私は、初めての外国にただただビビッていたのだ。
 何とかなる。何とかなる。とみんなの前では、強気の表情を崩さないようにしながらもため息とともに、私の頭の中にこだましていたのは童謡「青い目のお人形」の一節である。

   青い目をしたお人形は、アメリカ生まれのセルロイド、
   アメリカ生まれのセルロイド、
   私は言葉がわからない。
   迷子になったらなんとしよう。

 ああ、今思い出しても冷や汗が出る。なんともうっとおしい。
 しばらくして、俳優の誰かがこの先どうするんですかと言ったか言わなかったのか、細かいことは忘れてしまったが、ともかく私は、俳優に向けて宣言したことは確かである。
 
  この作品は、箱が主役である。
  物語はまだない。
  俳優が箱を動かし、そこに物語が生まれるのだ。
 
  きょとんしているメンバーの中から、俳優頭のTが、一人動き出し、箱の上ににやっと笑いながら立っていた。
 なんだか箱が動き出したような気がした。
 箱の始まりである。
 その後、どういうわけか、箱は、述べ30人近くの俳優が出入りしながら、韓国、中国と彷徨っている。
 そんな箱の中から、本番中、あのときのメンバーが、顔を覗かせているような気がすることがある。
 これもまた夢の話。

ストアハウスカンパニー
木村 真悟