Ceremony2012ーおひさまのほうからー


  動くな
  そして
  立ち止まるな
  ただ耳を澄ませ
  冷蔵庫の野菜室のなかで
  かさかさに乾いた白菜の葉っぱのなかにいる
  お前の耳は何を聞いているのだ
  冷凍保存された俺の眼球は
  まな板の上の合い挽きのミンチの中で溶け出している
  おい、そこの誰か
  そうだよ
  そこにすわっているおまえだよ
  早いとこ畳屋に走って、針と糸を借りてくるんだ
  溶け出した風景の中で、ミシンを担いだおふくろが走り回っている
  あ
  もう間に合わない
  たちまちのうちに凍りついた大海原は
  あっという間にかき氷にされて
  さらさらと粉雪になって降り積もる
  そっと舌の上にのっけてみると
  なんだか苺の味がする
  そうだ、そんなもんだ
  毒茸にしびれた俺の舌が
  もつれながら何かを叫んでいるらしい
  が、おそらくはそれも嘘だ
  だからさっきから言っているじゃないか
  真実なんかどこにもありはしないんだって
  だから
  動くな
  そして
  立ち止まるんじゃない